給料を上げても辞めていく!?「働きやすさ」から「働きがい」へシフトする自走型チームのつくり方
「待遇を改善したのに社員が辞める」という新しい離職の悩み
近年の賃上げラッシュや残業削減の推進に伴い、多くの企業で基本給の引き上げや労働環境の改善が行われてきました。しかし、経営者や人事担当者様からは、次のような困惑と焦りの声が増えています。
「業界水準以上に給与を引き上げ、残業も削減したのに、若手や中堅社員が『成長を実感できない』と言って去ってしまう」
「残業を減らして休みを増やした結果、社内が『ぬるま湯状態』になり、指示されたことしかやらない社員が増えてしまった」
「ハラスメントを恐れるあまり、現場のリーダーが部下に注意や厳しい指導(フィードバック)ができなくなっている」
これまでは「給与や休日(働きやすさ)」の不足が主な離職理由でした。しかし、一定の環境が整った現代において、意欲のある優秀な人材ほど「このままこの会社にいて、自分は成長できるのだろうか」「自分の仕事に意味があるのだろうか」という「働きがい(成長・貢献の実感)」の不足を感じて離職を選択するようになっています。
今、中小企業に求められているのは、単なる「ぬるい働きやすさ」の提供から脱却し、高い目標に向かって社員自らが考えて行動する「心理的安全性をベースにした働きがい(自走型組織)」へのシフトです。
「働きやすさ」と「働きがい」の4つのマトリクス
組織の健全性を測る上で、「働きやすさ(環境・待遇)」と「働きがい(成長・目標)」のバランスを理解することが重要です。
- 1. ブラック組織(働きやすさ:低 / 働きがい:低): 待遇が劣悪で成長実感もなく、離職率が非常に高い状態。
- 2. ブラック労働・搾取型(働きやすさ:低 / 働きがい:高): やりがいはあるが過酷な労働環境。燃え尽き症候群(バーンアウト)による離職が多発。
- 3. ぬるま湯組織(働きやすさ:高 / 働きがい:低): 残業もなく手厚いが、目標や緊張感がなく自走しない。優秀な若手から「不安」を感じて辞めていく。
- 4. 自走型組織(働きやすさ:高 / 働きがい:高): 安心して発言できる環境がありつつ、自社の理念・バリュー(価値観)に基づいた高い目標に挑戦できる。
企業が目指すべきは、ぬるま湯でも過酷な環境でもない、「高水準の働きやすさ」と「高い働きがい」を両立させた「自走型組織」です。
「働きがい」を生み出す自走型チーム構築の3つの柱
社員が自分の仕事に意味を感じ、主体的に動く組織を作るための具体的な構成要素を解説します。
1. 会社のビジョンと「個人目標」を結びつけるストーリー作り
単に「売上目標〇〇万円を達成しろ」というノルマを与えるだけでは、社員に働きがいは生まれません。
会社の経営理念やビジョン(何のために事業を行っているのか)と、社員個人の「業務内容」および「将来の成長」がどう繋がっているのかを明確に言語化します。「自分の仕事が誰の役に立っているのか」を意識できる環境を作ることが、内発的な動機付け(やる気)の原動力となります。
2. 成果だけでなく「バリュー(行動指針)への挑戦」を評価する
目先の数値結果だけで評価すると、社員は「失敗して評価が下がるリスク」を恐れて新しい挑戦をしなくなります。
結果の良し悪しだけでなく、「自社のバリュー(行動指針)に沿った前向きな挑戦や試行錯誤のプロセス」を正当に評価する仕組みを組み込みます。「失敗しても、自社の理念に沿った挑戦であれば評価される」という安心感があるからこそ、社員は自ら考えて行動できるようになります。
3. 心理的安全性を担保した「耳の痛いフィードバック」
心理的安全性とは、単に「お互いに傷つけ合わず、優しく接する」ことではありません。「何を言っても怒られない・否定されない」という人間関係の安心感(心理的安全性)の土台があって初めて、仕事の成果に対する厳しく適切なフィードバックが成り立ちます。
相手を全否定するのではなく、「期待しているからこそ、このプロセスの改善が必要だ」という応援のメッセージとしてフィードバックを届けることが、社員のモチベーションと成長を加速させます。
「働きがい」を高める自走型組織づくりの実践4ステップ
現場で「働きがい」を生み出し、離職を防ぐための具体的な導入手順を解説します。
ステップ1:自社で大切にしたい「バリュー(行動指針)」を明確化する
全社員が迷ったときの判断基準となるバリューを3〜5つ程度に言語化します。
「お客様の期待を超える提案を考える」「チームの成果のためにノウハウを共有する」など、日常の行動に落とし込めるレベルで言語化することが重要です。
ステップ2:成果とバリュー体現を可視化する「成長支援型評価制度」の導入
「売上などのKPI(定量成績)」と「バリュー発揮度(定性行動)」を掛け合わせた評価シートを作成します。
成果が出なくてもバリューに沿った行動が見られれば正当に評価し、どのような成長・貢献を行えば給与や等級に還元されるかというロジックを透明化します。これにより、「努力が正当に報われる」という納得感が生まれます。
ステップ3:月1回〜週1回の「定着・成長支援1on1ミーティング」の定着
現場での自走を促す最大の鍵は、定期的な1on1ミーティングです。1on1の場では、単なる作業の進捗管理ではなく、以下のような「働きがい」に触れる対話を実施します。
- 「今週の業務で、一番達成感や成長を感じた瞬間はどこか?」
- 「自社のバリューを体現するにあたって、躓いている部分やサポートが必要な点はあるか?」
- 「今後、どのようなスキルや経験に挑戦してみたいか?」
上司が指示を出し続ける「管理職」から、部下の目標達成を応援する「コーチ」へと役割を変えることで、部下の当事者意識と自走力は劇的に高まります。
ステップ4:チーム全体で「小さな貢献」を称え合う文化の醸成
上司からの評価だけでなく、仲間同士で日常のちょっとしたサポートやバリュー体現を感謝し・称え合う仕組み(サンクスカードや朝会での共有など)を導入します。
自分の貢献が周囲に認められているという実感(承認欲求の充足)が、職場への強い愛着(エンゲージメント)を育みます。
まとめ:「働きやすさ」の先にある「成長と貢献」が社員を引き留める
労働条件の改善や残業削減といった「働きやすさ」の追求は、企業にとってスタートラインに過ぎません。それだけで社員を引き留め、自走させることは不可能です。
企業理念やバリューを軸に、社員一人ひとりが「自分の仕事には意味がある」「この会社で挑戦し、成長できている」と確信できる「働きがい」を醸成することこそが、優秀な人材の離職を防ぎ、組織を成長させる本質的な人事戦略です。
MAUE-HRbaseでは、貴社の風土に合わせた「バリューの言語化」から、「成長支援型評価制度の再設計」、「現場で形骸化させない1on1の定着・管理職研修」まで一貫してサポートしております。
「待遇を改善しても離職が止まらない」「指示待ち社員を自走型に変えたい」とお悩みの経営者様・人事責任者様は、ぜひお気軽にMAUE-HRbaseまでご相談ください。


