【プレイヤー思考 VS マネジメント思考】優秀な営業マンがダメ上司になる理由と「育てる管理職」のつくり方

「プレイヤー時代は圧倒的な実績を出していたエース社員を管理職に昇進させた途端、チーム全体の業績が下がってしまった」「管理職自身がプレイング業務に追われ、部下の育成やケアまで手が回らずに現場が疲弊している」——。

組織の拡大期(特に社員数20人〜50人の壁)を迎えた中小企業において、このような悩みを抱える経営者様や人事責任者様は非常に多くいらっしゃいます。

現場で成果を出す「プレイヤー思考」と、組織を通じて成果を出す「マネジメント思考」は、求められる能力もマインドセットも全く異なります。プレイヤーとしての成功体験を引きずったまま管理職になると、自分自身が一番動いてしまい、部下の成長機会を奪ってしまう「プレイングマネージャーの罠」に陥ってしまうのです。

本記事では、「プレイヤー思考 VS マネジメント思考」の決定的な違いを整理した上で、優秀な個人を「自走するチームをつくる優秀なリーダー」へと変化させるための評価制度と育成アプローチについて解説します。

1.「プレイヤー思考」と「マネジメント思考」の決定的な違い

まずは、両者の思考パターンや行動特性がどのように異なるのかを比較してみましょう。

評価・比較項目プレイヤー思考の管理職マネジメント思考の管理職
主語・目的「自分が」成果を出すこと「チームで(部下が)」成果を出すこと
問題発生時の行動自分で抱え込んで直接解決する部下に考えさせ、解決をサポートする
時間の使い方の軸目の前の業務・案件の消化部下との対話、仕組み化、将来の育成
評価の対象関心短期的な数値・売上成果理念・バリューの体現と中長期の成長
組織に与える影響属人化、指示待ち部下の増加、管理職のパンク自走する組織、再現性の向上、高いエンゲージメント

プレイヤー思考の管理職は、短期的には自分の力で数字を作ってくれますが、長期的には「部下が育たない」「管理職が不在になると組織が止まる」というリスクを生み出します。一方、マネジメント思考の管理職は、部下のやる気を引き出し、再現性のある組織をつくることができます。

2.なぜ優秀な個人が「プレイヤー思考」から抜け出せないのか?

現場で成果を出してきた人がマネジメント思考にシフトできない背景には、個人の意識だけでなく、「会社側の制度や役割定義の不備」が存在します。

原因1:「管理職=プレイング」という曖昧な役割定義

中小企業では「自分のプレイヤー目標(売上ノルマ等)」を持ちながら、チームの管理も任されるケースがほとんどです。経営側が「管理職としての仕事(育成・1on1・業務改善など)」を評価項目として明示していないため、手っ取り早く評価されやすい「自分のプレイヤー成果」に集中してしまうのです。

原因2:「自分でやった方が早い」という成功体験の呪縛

実績を出してきた優秀な人ほど、部下の慣れない手つきや失敗を見て「自分がやった方が早い・確実だ」と感じてしまいます。仕事を奪って自分で処理してしまうため、部下は挑戦の機会を失い、いつまでも自走できるようになりません。

原因3:マネジメントや評価のやり方を学んでいない

「名選手、必ずしも名監督にあらず」という言葉の通り、プレイヤーとしての成果の出し方と、人を動かすマネジメントの技術は全く別物です。会社から十分な「評価者研修」や「1on1トレーニング」を受けないまま現場に放り出されていることが、最大の要因です。

3.「マネジメント思考」のリーダーを育成する3つのステップ

では、現場のエースを「チームを成長させる本物のリーダー」へ育て上げるためには、どのような仕組みが必要なのでしょうか。

ステップ1:評価制度で「マネジメント行動(育成・理念伝達)」を評価対象にする

人事制度・評価制度において、管理職の評価軸を明確に変える必要があります。
個人の売上数字だけでなく、「部下の育成・定着率」「1on1ミーティングの実施状況」「経営理念・バリューの現場への浸透度」を評価項目(コンピテンシー・バリュー評価)に組み込みます。「人を育てることが自分の評価につながる」というメッセージを制度として示します。

ステップ2:対話型マネジメント(1on1)の実践と定着

業務の指示命令だけを行う「管理」から、部下の意見を聞き、成長課題を一緒に見つける「対話」へとコミュニケーションの質を変えます。
月1回〜隔週での1on1ミーティングを仕組み化し、部下が自発的に「問い」を立てて行動できるよう促すスキルを管理職に身につけさせます。

ステップ3:評価者研修による「目線合わせ」と対話トレーニング

制度を機能させるため、管理職を対象とした「評価者研修」を定期的に実施します。
評価の基準や目的を統一するだけでなく、「部下に納得感のあるフィードバックを与える技術」「理念を自分の言葉で現場に伝える方法」を泥臭くトレーニングすることが、管理職自身の成長につながります。

4.まとめ:管理職が変われば、組織は自走し始める

「プレイヤー思考の管理職」から「マネジメント思考の管理職」への脱皮は、本人の努力だけに任せていては達成できません。

経営者が抱く「どのような組織をつくりたいか」という理念をカタチにし、管理職に求める期待役割を評価制度として明確に示すこと。そして、評価者研修や対話の場を通じて現場で伴走・サポートしていくことが不可欠です。

・個人の成果だけでなく「部下の育成・理念伝達」を評価する人事制度をつくる
・プレイヤー業務の手放しと「任せるマネジメント」への意識改革を促す
・評価者研修と1on1を通じて、管理職のマネジメントスキルを育てる

管理職がマネジメント思考へとシフトし、部下が生き生きと自走する組織づくり。その第一歩として、自社の管理職の役割定義と評価制度を見直してみてはいかがでしょうか。


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