【絶対評価 VS 相対評価】「頑張りを正当に評価してほしい」社員の不満を解消する人事制度の選び方
「社員の頑張りや成長を正当に評価してあげたいのに、評価の時期になると毎回社員から不満が出る」「評価制度を導入したものの、評価基準が曖昧で結局年功序列や印象で点数をつけてしまっている」——。
人事評価制度の導入や見直しを検討される際、多くの経営者様や人事責任者様が突き当たるのが、「絶対評価にすべきか、相対評価にすべきか」という悩みです。
社員のモチベーションを高めるために「目標の達成度で測る絶対評価」を導入したいと考える一方で、「もし全員が高評価になったら給与原資が足りなくなってしまうのではないか」という経営上の不安から、枠数が決まっている「相対評価(S評価は〇%、A評価は〇%…という割り振り)」を捨てきれない企業が数多く存在します。
本記事では、絶対評価と相対評価のメリット・デメリットを比較し、なぜ従来の相対評価では社員の不満が溜まるのかを紐解いた上で、中小企業が目指すべき「原資の枯渇を防ぎながら社員の納得感と自走力を高める評価制度のつくり方」を解説します。
1.絶対評価と相対評価の根本的な違い
まずは、両者の評価方式の定義と特徴を整理しておきましょう。
| 評価方式 | 絶対評価 | 相対評価 |
|---|---|---|
| 評価の基準 | 個人の目標達成度や行動基準(一定の基準) | 集団(部署や会社全体)の中での相対的な順位 |
| 評価の分布 | 制限なし(全員高評価や全員低評価もあり得る) | 割合が固定(例:S評価10%、A評価20%など) |
| 社員の納得感 | 高い(自分の成果や努力が直接反映される) | 低い(他人の出来不出来に自分の評価が左右される) |
| 人件費コントロール | 難易度高(予算をオーバーするリスクあり) | 容易(人件費・賞与原資を事前に固定できる) |
| 組織風土への影響 | 相互協力・切磋琢磨が生まれやすい | 社内競争、足を引っ張り合う文化が懸念される |
相対評価は「会社としての人件費管理がしやすい」という経営側の都合には合致していますが、現場で働く社員目線で見ると「努力しても他人の評価によって自分のランクが下げられる」という理不尽さを生み出しやすい仕組みです。
2.なぜ「相対評価」は社員の不満を生み出すのか?
日本企業の多くが長年採用してきた相対評価ですが、現在の労働環境や価値観の変化に伴い、さまざまな歪みを生み出しています。
(1)努力や成果と「評価結果」が直結しない
相対評価では、「事前に設定した目標を120%達成した」としても、同じ部署に150%達成した同僚がいれば、高評価の枠からはみ出て「普通評価(C評価など)」に押し下げられることが起こります。
社員からすれば、「目標を達成したのに、なぜ評価が上がらないのか」という不満や不信感が募り、モチベーションの低下や優秀な人材の離職に繋がります。
(2)チームワークの破壊と「ポテンヒット業務」のなすりつけ
「同僚=高評価枠を争うライバル」という構造になるため、他人のサポートをしたり、自分の担当外の「誰の仕事でもない隙間業務(ポテンヒット)」を引き受けたりすることが損になります。チームでの協力体制が崩れ、個人主義化が進んでしまうリスクがあります。
(3)管理職による「調整の儀式」と評価の形骸化
一次評価で管理職がどれほど部下の努力を評価していても、最後は「部署ごとのS評価・A評価の枠数」に収まるように二次評価や全社会議で数字の調整(無理やりランクを下げる作業)が行われます。
調整の裏事情を知っている管理職は部下に本当の理由を説明できず、「会社の都合だから…」と曖昧なフィードバックしかできなくなります。これが評価制度全体の形骸化を招くのです。
3.かといって「純粋な絶対評価」に飛びつくのも危険な理由
では、相対評価をやめてすべてを「絶対評価」に切り替えれば問題は解決するのでしょうか。
実をいうと、何の戦略もなく純粋な絶対評価にシフトした結果、経営が行き詰まってしまう中小企業も少なくありません。
危険性1:人件費(給料・賞与)のパンク・原資の枯渇
絶対評価では、全社的な業績が良くない局面であっても、個人の目標達成率が高ければ全員に高評価を出す必要があります。その結果、営業利益を大幅に上回る昇給額や賞与の支払いが発生し、会社の資金繰りを圧迫する「人件費のパンク」を引き起こします。
危険性2:目標設定のインフレと「甘い目標」の横行
「絶対評価で成果を出せば給与が上がる」となると、社員や評価者は高評価を取りやすくするために、最初から簡単に達成できる「甘い目標」を設定しがちになります。チャレンジングな目標を設定した人ほど損をするという本末転倒な状況が発生します。
4.中小企業が目指すべき「活きた絶対評価」のつくり方
社員の不満を解消してモチベーションを高める「絶対評価」のメリットを活かしつつ、経営上の「人件費リスク」を抑えるためには、制度の設計思想と運用の仕工夫が不可欠です。
MAUE-HRbaseが推奨する、現場で機能する「活きた評価制度」構築の3ステップをご紹介します。
ステップ1:会社の「理念・バリュー(行動指針)」を絶対評価の軸にする
単なる数値目標の達成率(結果だけ)で評価するのではなく、自社の創業の想いや「求める人物像」を言語化したバリュー(行動指針)に対する行動姿勢を絶対評価の主軸にします。
「周囲と協力して業務を進めたか」「自ら課題を見つけて挑戦したか」というプロセスや行動姿勢を共通のルーブリック(評価基準)で測ることで、甘い目標への逃げを防ぎ、自社に合った行動を促進します。
ステップ2:「評価(成長度)」と「賞与原資(業績)」を切り分けて連動させる
個人の「評価結果」そのものは絶対評価で正当に判定し、社員の成長や努力を称えます。
一方で、実際の「給与昇給や賞与の支払い金額」については、全社の営業利益や業績目標の達成度に応じて原資(ポータル予算)が上下する算定ロジックをあらかじめ制度に組み込んでおきます。
これにより、「頑張りは正当に認められた(絶対評価)」という納得感を与えつつ、全社業績が伴わない場合でも人件費がパンクしない健全な経営管理を両立できます。
ステップ3:評価者研修と1on1による「フィードバックの質の向上」
制度の形式以上に重要なのは、評価者である管理職が絶対評価の意図を理解し、部下に納得感のある説明ができることです。
管理職向けの評価者研修を定期的に実施し、甘甘査定や辛当査定を防ぐ「目線合わせ」を行うとともに、1on1ミーティングを通じて「次に向けてどう行動を変えれば評価が上がるのか」を丁寧に伝える対話を現場に定着させます。
5.まとめ:形式の模倣を脱し、自社と社員が共に育つ評価制度へ
「絶対評価か、相対評価か」という議論において重要なのは、単に欧米風の流行りを追うことでも、管理のしやすさだけで選ぶことでもありません。
経営者様が抱く「社員にどう育ってほしいか」という想いを言葉にし、頑張った人が正当に報われ、同時に会社も健全に成長できる仕組みを泥臭く構築することです。
・相対評価による「理不尽な評価の調整」を脱却し、社員の納得感を第一に考える
・バリュー(行動指針)を軸にした絶対評価で、社員の自走力と協働姿勢を育てる
・評価(絶対評価)と給与原資(業績連動)をロジックで繋ぎ、経営リスクを回避する
社員一人ひとりが「自分の努力が正当に見られている」と感じ、生き生きと働く組織へ。施行・運用のステップを見直しながら、自社に最適な評価制度をつくってみませんか。
【納得感を高める評価制度の再設計・原資シミュレーション・評価者研修のご相談はこちら】
MAUE-HRbaseでは、絶対評価をベースとした自社オリジナルの評価・賃金制度の設計から、業績と連動させた人件費シミュレーション、現場で制度を動かす評価者研修・1on1導入までトータルで伴走サポートしております。「社員から評価への不満が出ている」「制度が形骸化している」という経営者様・人事責任者様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


